社会 

 

里山資本主義に夢はない

2015-1-20 校正4/7



藻谷浩介と養老孟司の対談の感想
 里山資本主義は、確か、まきを燃やすと燃料(石油)購入費が浮いて、その分、地域経済に回せる。薪をとるために企業活動が必要で、それら地域産業が地域活性化の切り札の一つ、という農村再興の話だった。これは小さい小さい夢。日本人はこれに希望をもてない。

 原子力発電に限界を感じ、再生エネルギーブームとなった。太陽光発電、藻から石油をとる、風力発電など、電気を起こすのが注目された。そんな代替エネルギーに脚光が浴びた時に、山のまきで発電して、地域の電気需要を満たす、というのが、里山資本主義のウリだった。しかも、里山の管理も出来るし、その雇用もあるし。地域が潤う、という。私はNHKの特集をちゃんと見た。

 正直、イスラエルの荒野、山林のないイギリス、砂漠が多いアフリカ地域など、里山がない地域ではできない。世界の問題を解決することはできなくて、日本限定のお話。山の林が多い日本、カナダ、シベリアくらいなら、一部でやれるかもしれないが・・・

 里山資本主義では、世界のエネルギー問題を何も解決できない。つまり、里山資本主義に世界進出はない。日本で小さく、ぼちぼちやるしかないのか?

 北海道では必要ない。なぜなら、ボタ山の石炭がまだ使えるからだ。山林を燃やすよりは、石炭のほうが効率がよい。地熱発電があるところも、電気があるからいらない。

 太陽電池が田畑におかれた地域も、もうそんなマキ発電はいらない。そこも進出できない。まきをとってくる手間も面倒だし、太陽電池で十分間に合う。

 山林が多く、山林組合がしっかりした所で、廃材が多く出る所でなら、なんとかなるかもしれない。まき燃料発電は、やっと活躍の場をみつけた。山林の近くの過疎村だ。大勢の人に回す分の電力は発生できないから、町は無理。村にこそ活躍の場が残されている。

 過疎の山林でしかできない里山資本主義に夢がある? 

 実はない。代替エネルギーに未来がある、と思われた。が、太陽光発電は発電量が少なくて、そのままでは電力が不足するとしだいに現実が見えてきた。自然エネルギー先進国のドイツが電気を隣国からもらっていており、芳しくないからだ。風力発電も日本は設置場所が少ない。自然エネルギーの発電は、多くは望めないし、もう大きな期待はできない。

 自然エネルギー幻想はついえかけている。本質的には、里山資本主義=まき燃料発電だ。それも先行きが明るいわけではない。小さく細々と局地的にやっていけるかどうかだ。

 計算してみよう。
 確か、設備は5000万から1億。せいぜい2億以下だったと思う。確か、2000軒の電気需要は満たせなかった、と思う。多くて600軒くらいだったように思う。こういうものは元がとれるのは10年。自然エネルギーはそんなものだ。すると、年間500-1000万円くらの収入だ。2人分の雇用にしかならない。

 こういうのはどこかにあるはずだ。日本全国で500設置されたとしても、初期投資が1000億。その後は、毎年100億の電気代をとれるとして。100億の産業だ。これが、ばら色と思うか? 日本の未来の産業を救う"まき発電"だと思うか? 私は思わない。こういうのが現実なのだ。

 藻谷さんは経済学者だから、きっちりと計算できているのだろう。利益は十分とれないことを。

 そもそも、燃料革命では、未来は明るくない。石油。火力発電は最大規模だ。原子力発電も大きな市場がある。これらは20世紀の一大産業となった。が、代替エネルギーはそれらより市場規模が劣る。太陽光発電は最大の産業となったが、石油やガスに比べられないほど小さい。そのほか、水力は長くダムは建設費がたくさん使われた。が、風力の産業規模は小さい。まき発電(里山資本主義の根幹)は、全国展開は無理なので、さらにさらに小さな市場。そんなに小さな猫の額ほどの市場しかないものに、夢を託せと言われても・・・・

 薪だよ。薪。平安、江戸時代から続いている薪。再利用というか、見直しというか、そんな古くからあるものでは、いくら用法を少し変えたところで、社会は発展しない。シェールガス、シェール石油のシェール革命は、アメリカを元気づけた。しかし、所詮、石油にガスだ。生活は変わらない。薪がいくらがんばっても、国家を浮上させる力はない。村興し程度だ。

 この現実を見よう、と思った。里山資本主義に、村興しくらいの希望しかないのだ。そこには山林組合が寄ってくるだけだ。町や都市の人も近寄らない。それが限界なのだ。里山資本主義はそんなに夢がない。ムシのいい話ばかりしてないで。

 そもそも、山地で発電するなら、水車のほうがよっぽどいい。薪は発電のために燃やすよりも、暖をとるために、風呂を沸かすためで、十分だ。里山資本主義は、発電をするところで、私は耳を疑った。電気のために、そこまでするか、と。発電にそんなに夢はない、と思ったものだった。

 

 (記 薪発電は、ドイツですでに行われ、補助金を出して、規制をかけないと、産業として成立しない、という結果が出た、とクローズアップ現代に。それが次の評論。)

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