電波犯罪者の末路

 

電波犯罪者の末路

 彼、宮本は、レッドフロッグという組織から電波犯罪を勧誘された。被害者に三年も電波を浴びせ続けた。電波犯罪が報道されても、盗聴を続けた。とうとう被害者に気づかれてしまった。被害者は、被害届けを提出して、警察に、「あの家から電波がきます。」と、言った。

 警察は、早速調べた。警察は報道後一ヵ月後には、電波検出器を用意していた。その市では、被害者と名乗り出たのは、数人だった。だから、警察は、容疑者として、最初に、その家を捜査した。

 こっそり日中に刑事がやってきて、検出器で宮本の家から出る電波を記録した。宮本は、捜査に気づかなかった。そして、翌日、宮本は捕まった。

 玄関の呼び鈴がなる。そして、宮本の妻が出た。すると、刑事が数人で玄関を取り囲み「あなたには、逮捕状が出ています。家宅捜索の執行令状もあります。」と、入り込んできて、すぐさま逮捕して、家の中の電波機器の作動中の写真を写し、押収した。

 急なものだから、電波機器は、盗聴中で、動いていた。そのスイッチを切ることも宮本の妻はできなかった。

 宮本の妻は、警察署に連行された。警察は、アルバムの写真を押収した。写真には、犯罪者自身の周波数記録が残っている。それを調べると犯罪をいつからつづけてきたかもわかるからだ。

 翌日、宮本の妻は、電波犯罪を三年続けてきたことを自白した。そして、夫も共犯であることを自白した。

 宮本の妻は、送検された。

 一週間後、宮本は解雇された。犯罪者を雇えない。それが理由だった。

 二週間後、取調べがようやく終わりつつあった。家宅捜索でめぼしいものをすべて押さえたので、一ヶ月後には、自宅に戻れた。

 近所から挨拶がきた。「あなたが最初に捕まるのは意外でしたよ。でも、あなたとはこれからおつきあいできません。犯罪者の仲間だと思われるので。」

 そして、宮本には子供がいた。小学生になる9歳の双子である。この二人は、両親の取り調べの間、おばあちゃんが変わりに面倒をみていたが、この二人は、学校では、親が逮捕されたことが知れ渡っていて、いじめられた。この子供たちも、親と同じく電波機器で犯罪をして遊んでいた。それは、表にはならなかった。

 そして、宮本の妻が、その近所で買い物に行った時のこと、後ろから、指をさされて、「あの人が電波犯罪でつかまった宮本さんよ。」と、主婦たちがこそこそ言い合うのが聞こえた。宮本の妻は外出するのが怖くなった。

 裁判のほうは、自白したこともあり、早く結審しそうだった。が、その度に新聞に大きく書かれた。その地域では、宮本の電波犯罪を知らない人はいなくなった。

 脱出。近所からは疑惑の目で見られる。子どもは学校でいじめられる。この地域には住みづらくなった宮本は、せっかく買ったマイホームを売り払い、逃げることを決意する。ローンもまだ返済していない。さらに、夫は、職も失った。もう、生きていけない。

 夫は、退職金も受け取れなかった。当然である。もし、定年間近であれば、電波犯罪がみつかって、逮捕され解雇されたら、数千万円の退職金がパーになる。宮本はまだ若かったので、たったの数百万円の損害ですんだ。マイホームを急いで売らねばならず、捨て値で売り払うことになったことで、一千万円近くも損を出した。職も失い、もう、人生のおさき真っ暗である。

 子供の養育費すらおぼつかない。ただし、家を売った蓄えが少しできた。今後は、逃げた先の新しい土地で、小さなアパートで隠れるようにして暮らさなければならない。そんな人生が彼らに待ち受けていた。

 軽い気持ちで電波犯罪に手を出したばかりに、こんな悲惨な末路が待ち受けていた。宮本は、悔いた。

 幸い、自白したことで、反省の色を見せたので、懲役は二年半だった。三年にならずにすんだ。懲役が三年になると、執行猶予もつかない。刑務所暮らしになると、子供は親と離れて祖母とくらさなければならない。それだけをまぬかれたことだけが、幸運だった。

 さらに、被害者には、被害で、盗聴や苦痛、精神的慰謝料で、一日一万円。三年で約一千万円を払うことになった。いや、それは、弁護士をつけて、半額にまで引き下げたが。

 が、彼らは、電波犯罪で、すでに一千五百万円のくらいの損害を出していたので、財産がなく、職も辞めたので、支払いを免除されただけである。

 哀れな宮本は、たった一回の大きな犯罪で、人生を台無しにした。

01-10-2 08-8-22 校正 2015/4/20

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