電波狩り(デンパガリ)


電波狩り(デンパガリ)

 レッドパージ。日本には赤狩りという過去がある。それは共産主義者の公職追放運動のことである。言論、思想で、公務員を選ぶのは、思想信条の自由の侵害だ。だから、現在では非難される。しかし、電波犯罪者狩り。それは、公職についた者から電波犯罪者をみつけ出し、追放することだ。それは犯罪者をみつけだすという法の違反者を見つけ出す法治国家としてはごく当然の行為であり、認められるものである。では、電波犯罪者だからといって、職場を解雇できるかといえば、別問題である。厳密には、労働法では、私生活での犯罪を理由には解雇できないが、社会慣習から許される。もし、職場に電波機器を持ち込んでの犯罪ならば、職務規定違反であり、それは正当化しうるものだが。そして、民間企業なら、犯罪者は業務に差し支え、解雇も黙認されるものだ。電波犯罪者狩りは、思想信条で人を差別するものではなく、犯罪を犯したゆえに、処罰することであり、正当なものだ。犯罪者をみつけだす仕事自体は、合法であり、何の問題もない。警察はそれを職務にする。警察は必ず、犯人を罰する。もし犯罪者を何も罰しないとしたらそれこそ、何のために法律があり、警察があるのだろうか。逆に、電波犯罪をしていることを警察に告発せず、黙認することこそが、市民の違法者の通報義務に逸脱する。電波犯罪者狩りは、行きすぎのように思えたが、合法だった。そして、公務員の中でも、国会議員など、人を代表して、倫理観がもっとも厳しく問われる職業からそれは始まった。電波犯罪者狩りは、政界の洗浄のはじまりだった。

国会会期中、△△委員会

 共産主義者「これが、××議員。私どもが入手したこの電波記録は、あなたの家から出ていたものです。」

 

 ××議員「それを見ないことには、なんとも言いかねる。」

 仕掛けたのは、共産主義者だった。やられる前に、やれ。国会での追及が始まった。

 翌日、その××議員の電波記録は、マスコミを席巻した。警察が動いた。××議員の自宅は、捜索令状が入り、電波機器すら、出てきた。××議員は、その翌日、辞表を提出した。

 電波犯罪者の公職追い落としの第一号は、意外にも、非共産主義者議員だった。共産主義者はこの手口で、次から次へと、議員の犯罪を暴いていった。そのために、電波犯罪者狩り国会と呼ばれた。これほど、前代未聞の事件はなかった。連日、ワイドショーが取り上げた。議員の倫理観の低さに、多くの国民は嘆いた。

 さすがに自民、民主なども黙ってはいなかった。反撃に出る。警察に圧力をかけて、組織犯罪の首謀者で、共産主義者関係者を重点的に、捜査させる。とうとう共産主義者の尻尾が捕まった。ワイドショーは、犯罪組織がついに捕まると、報じる。

 ワイドショーを見た国民は、自分たちの町も電波犯罪者から守らなくてはならないと、自警団を結成して、電波犯罪を見張るようになった。日本全国で、電波犯罪撲滅運動が広がり、町のクリーン化が始まる。 その名を『電波狩り』と呼んだ。

自警団の若者あ「おい、あそこは共産主義者党員らしいぜ。電波犯罪をやっているかもよ。あそこを監視しようぜ。」

 仲間「それはいいよ。」

 自警団の若者「おっ、みろよ。盗聴電波が出てるよ。やったよ。」

 仲間「これで5人目だよ。」

 すぐに警察にその記録を持ち込むと、警察は捜索令状をとって、共産主義者党員を逮捕した。

 そんなゲームが若者に流行した。通称、電波狩り(デンパガリ)。

02-12-20 校正 2015/4/20

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