電波犯罪報道漫才 ニュース17
導入音楽 高いド、シ、ラ、ソ、ファ、ミ、レ、ミ、ミー、レー、ドー
とおる 「こんばんは司会の昨日哲也です。」
りゅう 「アシスタントのさごじょうです。出身は気仙沼です。」
とおる 「今新しいニュースが入ってきました。番組の予定を変更してお伝えします。今日午後4時半に、埼玉県春日部市あそこで、」
りゅう 「あそこってどこ?」
とおる 「三丁目かな。」
りゅう 「本当か?」
とおる 「じゃあ二丁目かな。」
りゅう 「どっちだ。」
とおる 「春日部三丁目で、
りゅう 「わかっているんなら最初から言え。」
とおる 「民家に強盗に入り、なおも立てこもっています。現場のひろしさん。今はどういう状況ですか。」
りゅう(ひろし役) 「埼玉放送。略して、SSのひろしです。現場の民家前に来ています。現在、通報から三十分が経過してもなお、男は民家に銃をもってたてこもっています。閑静な住宅街は騒然としています。」
とおる 「ひろしさん。中の様子はどうでしょうか。」
りゅう 「わかりません。状況をお伝えします。警察が民家を包囲してスピーカーで説得しています。あっ、今、三人のロボコップが民家に突入しました。ガチャ、ボチャ。ネコ。」
とおる 「続けてください。」
りゅう 「警官一人が玄関の鍵を開け、靴を脱いで」
とおる 「そこから中の様子が見えるのですか。」
りゅう 「はい。よく見えます。ロボコップにはカメラがついています。ロボコップは廊下を走り、」
とおる 「廊下を走ってもよいのですか。」
りゅう 「はい。学校ではないので。ロボコップは、居間にいる強盗に向かっています。あっ、今。」
とおる 「それが言いたかったのですか?」
りゅう 「今、強盗と警官はにらみあっています。あっ銃声です。強盗が発砲した模様です。すごい。」
とおる 「何かあったのですか。」
りゅう
「ロボコップは弾丸より早く上体を反らし、倒れそうになりつつ、手を上にふりながら弾丸をよけています。弾丸の軌跡が、ロボコップの上下左右を走っています。まるで映画のようです。」
とおる 「ロボコップはよけなくてもいいのではないですか。」
りゅう 「おっと、ロボコップの反撃です。強盗に一発殴りました。強盗は、五メートル吹き飛ばされました。ドスン。衝撃波で、大地が揺れています。」
とおる 「あっ、今、突然の地震です。震源地は春日部市三丁目。震源の深さは海抜ゼロメートル。沿岸の人は津波に注意してください。続けてください。」
りゅう 「ロボコップは強盗を持ち上げ、回転しています。ロボコップは、強盗を放り投げました。強盗が民家の屋根を突き抜けてこちらに飛んできます。あー危ない。」
とおる 「どうしたのですか。」
りゅう 「手前30メートルで強盗は落ちました。」
とおる 「かなり遠いですよね。」
りゅう 「はい。こちらは、大丈夫です。強盗はひらりと着地しました。あっ四回半だ。世界初だ。」
とおる 「スケートではありません。」
りゅう 「警官がすぐさま十人、強盗に飛び掛りました。強盗は、警官の下敷きです。犯人を取り押さえました。犯人確保。犯人確保。」
とおる 「人質は大丈夫ですか?」
りゅう 「今、ロボコップにかかえられ人質は民家から出てきました。ロボコップも人質に怪我はありません。人質の頭にも毛がありません。ロボコップの頭にも毛がありません。」
とおる 「そこは寒くないですか?」
りゅう 「次は、新種の電波犯罪の被害を六年も受けた奈良の桜木さんを取材しました。そのVTRをどうぞ。」
とおる 「V入ります。(アシスタントの声)、いやあ、昨日寝てないから、まぶたが重くて重くて。」
りゅう 「昨日哲也さんもつらいよね。(次のニュース原稿を復唱する)、ミラノで開かれた国連ノンポリ決議で・・・」
とおる 「原稿は暗記したな。V終わります。(アシスタントの声)スタジオ、五秒前、三秒前、はいスタート。」
りゅう 「桜木さんの趣味は、モノポリーだそうです。」
とおる 「原稿とぜんぜん違うよ。(冷静になって)今日は、スタジオに桜木さんをお招きしています。桜木さん。干渉低周波電波というのは何でしょうか?」
りゅう(桜木役) 「ですからーっ。干渉低周波電波というのは、電波を干渉させて、低周波電波を発生させる。おわかり?」
とおる 「かんたんですね。」
りゅう 「簡単ではありません。その電波で人体に干渉させるために、FM電波が使われました。」
とおる 「私もよく聞いているよ。君はクールね。。。」
りゅう 「ハンバーガーじゃないのです。密度波です。エフエムの電波と同じと思ってください。縦波の電波です。」
とおる 「たてがみですか。馬のたてがみとどう違うのですか。」
りゅう 「たてがみじゃありません。縦波です。」
とおる 「どうして干渉低周波を浴びると、痛みが生じるのでしょうか。」
りゅう 「共鳴と同じ原理です。電波を人体と同じ周波数にすると、人体と共鳴する。それで、人体に干渉させることができるのです。」
とおる 「電波は目に見えないですよね。どうやって検出したのですか。」
りゅう 「クールに電波検出器を用意して、クールに検出しました。私はクール。」
とおる 「被害にあって、六年間。一番つらかったことは何ですか。」
りゅう 「誰も理解してくれないことです。家族は変な目でみるし、医者は、精神病扱いするし、警察は被害届けを受理すらしてくれません。」
とおる 「あなたは十分変ですよ。」
りゅう 「えっ」とにらむ
とおる 「いえ、失礼。何か訴えたいことはありませんか。」
りゅう 「いたずらでも電波を人に浴びせかけることは犯罪です。すぐにやめてください。」
とおる 「はい、いたずら電話をかけるのは、犯罪です。そうですね。ありがとうございました。」
りゅう 「スクープです。私たち、ニュース17は、桜木さんに電波を浴びせていた犯人から、証言をとることに成功しました。」
とおる (犯人役、変換された低い声で)「桜木は、二年前に引っ越してきました。すると近所の消費税を反対しているやつがね、」
りゅう 「誰ですか。」
とおる 「大店がきらいなやつですよ。」
りゅう 「あっ彼ですか。」
とおる 「わかるわけないよ。彼が、桜木は右翼でぼう組織の会員で危ないやつだと、この町の安全のため追い出さなくてはならないと、電波機器を貸してくれました。」
りゅう 「はい。」
とおる 「その電波機器で桜木を毎日電波を浴びせていじめてやりました。彼は、盗聴されていることがわかっているらしく、なにやら訴えていました。」
りゅう 「なんて言ってましたか。」
とおる 「最初の頃は被害者ぶって、頭が痛い、痛いとわめいていましたけど、警察に行ってからは、やめんかこらあ。お前らムショおくりじゃこらぁ。とか」
りゅう 「それだけですか。」
とおる 「桜木は、強い電波を出すと突然怒鳴りだして、三丁目の何番地のY、やめろって言い出すんです。あいつは家にいながらにして、電波機器ももっていないのに、遠くの犯人がわかるみたいです。」
りゅう 「詳しく教えてください。」
とおる 「強い電波出すと、桜木は地図を取り出してきて、地図を見ながら犯人の名を呼んで、俺の声が聞こえるか。やめろY。と言うのです。あいつは電波が見えるようです。」
とおる 「ばれたら、怖いので、強い電波をだすのはやめました。桜木の家は近所中で盗聴しているのですから、名前呼ばれたら、近所中の恥さらしですから。でも、ふだんは、おかしなことを考えているのですよ。面白いから電波浴びせるのはやめて、盗聴することにしましたわ。すると。」
りゅう 「なんですか。」
とおる 「桜木は、おかしなやつでね。毎日、誰もいないのに、独り言をいうようになりましたわ。」
りゅう 「なんと。」
とおる 「確か、神と交信してたかな。いや悪魔と闘ってたかな。時々、マスコミに伝言してくれとか言ってましたわ。」
りゅう 「何をですか。」
とおる 「ニュース17に、・・・・・」
りゅう 「ただいま音声がとぎれました。」
スタジオに戻り
とおる(昨日哲也役)
「これがその問題の盗聴記録です。マスコミに伝言してくれ。といった中身はこれです。『昨日哲也さん、いつもおでこに電波が浴びせられているよ。気をつけてください。』桜木さん、本当にそんなことを言った覚えがありますか。」
りゅう 「そうですか。誰を狙ったのかはわかりませんが、勧誘を受けたといってますから、組織犯罪の仲間ですね。悪いやつですね。こんな悪いのに狙われたら、被害者もかわいそうだ。」
とおる 「あなたを狙った犯罪者ですよ。」
りゅう(桜木役) 「面白い被害者ですね。盗聴されているから、それを逆用したんだ。賢い被害者ですね。しかし、盗聴された情報をさも事実のようにしゃべっていて、それを放送するとは、名誉毀損になりませんか。」
とおる 「私の話を聞いてますか。被害者は桜木さんあなたです。」
りゅう 「私ですか。えっ!!!名誉毀損で訴えます。すぐに謝罪と放送中止をしてください。」
とおる 「訴状を読んでないのでコメントできません。」
りゅう 「盗聴で得た情報を利用したら、犯罪です。このケースは明らかではないですか。どうりで見た人物だと思ったんだ。近所の佐藤じゃないですか。」
とおる 「桜木さん、興奮しないでください。佐藤じゃなくて、黒石です。」
りゅう 「名前を言ってもいいのか。」
とおる 「落ち着いてください。今はデジタル放送です。放送禁止用語、箇所は自動的にカットされます。さっきのVTRもほらこの通り。盗聴内容を語ったところは、口ぱくです。」
りゅう 「検閲は、言論の自由の侵害だ。」
とおる 「それは昨日哲也である私のセリフです。」
りゅう 「放送されてないなら、訴状は取り下げます。」
とおる 「これはもういらないということですね。(と訴状の紙を破る。)」
りゅう 「なんで持っているのだよう。」
とおる 「ところで、桜木さんは、盗聴されていることを知っていましたか。」
りゅう 「はい。そんな予感はありました。証拠はありませんが。」
とおる 「あなたは電波が見えるのですか?」
りゅう 「電波見えません。ただし、空気と干渉して、通過線上に、わずかな光の乱反射が起きます。それで、見えるときもあります。」
とおる 「それは霊感ですか。特別な才能ですか。」
りゅう 「いえ、私はふつうの人です。」
とおる 「とても変わったふつうの人です。」
りゅう 「本当は、右から電波がくると、右側が痛くなる。左からくると、左が痛くなる。右四十五度から電波がくると、右四十五度が痛くなる。そうやって、痛くなった箇所の位置から、電波の発信源をつきとめます。痛みに敏感なら、だれでもわかりますよ。」
とおる 「私を被害者だとみなす根拠はなんですか。」
りゅう 「表情から、頭がぼおっとしていることと、意思が弱そうになっていることから、電波被害者だと私は考えています。電波は写真で記録されますから、テレビの映像を調べたら、はっきりするでしょう。昨日哲也さんは、自分が電波被害者だとは考えていないのですか。そんなに注目されるところにいたら、多くの反感を買うでしょう。きっと誰かが電波を浴びせていますよ。」
とおる 「実は、その検証はもうしました。私も電波被害を受けていました。三年前から。では、その検証VTRは、明日に放送します。今日は遠いところお越し頂きありがとうございました。次は、天気予報です。」
りゅう 「今週は、冬の季節、季節の風物詩。大陸から渡り鳥がやってきました。その映像をごらんください。北海道には、がんが飛来しました。東北沖には、今年は新しいお客さんです。北朝鮮から、はるばる首の長い一羽の珍しい鳥が飛んできました。テポドンです。普段は海にもぐって、どこに飛来したかもかわりません。さて、全国の天気です。沖縄那覇では、晴天に恵まれ、買い物日和でしょう。」
とおる 「買い物日和って何?」
りゅう 「九州博多では、空気が澄み渡り、夜には海面に浮かぶ、工作船も見えるでしょう。」
とおる 「もうないよ。公式には。」
りゅう 「東京は、今年秋一番の荒れた天気で、強風が吹き荒れます。帽子が風で飛ばされないように注意しください。頭の上のお皿が丸見えになりますから。(帽子が相方に飛ばされる、頭の上の皿をみせる)」
とおる 「お前はかっぱか。」
りゅう 「さごじょうです。」
二人で 「ありがとうございました。」
02-11-20 校正 2015/4/20