社会 

 

『だから日本はズレている』(古市憲寿)の感想


2014-12-26


 『だから日本はズレている』(新潮新書 2014年 )古市憲寿
 これを立ち読みした。古市氏はNHKの深夜ニュースで顔を見た。彼は温和で、左派よりも右。先進的なことにはついてゆけないようだ。が、埼玉出身でなかなかいい若者に見えた。

 私は友達いないから、左派批判ばかりしていたら、同志は自民党支持者や、産経、保守、アメリカの学者ばかりになってしまう。見込みがあるのは褒めておかない、と。

 私が立ち読みするのはお金ないから。私は実家にいる。地震予知を仕事にする。その寄付でなんとかやっている。本を買う金はない。寄付して頂けると、もっと詳しく分析できるのだけど。

 彼は社会学を専攻とするから、おおらか。経済学者や左翼みたいに論調が55年体制の論調をひきずってはいない。新しいネット上でのありきたりな左翼論調でもない。そこが新鮮で、いい感じ。

 さっと読んだ印象
 彼は、日本にリーダーがいない、という。関東ではみかけないかもしれない。大阪は必ずリーダーが集団をまとめる文化だから、いる。
 これは日本文化の性質とすることはできなくて、単に現代の風土といえる。織田信長、秀吉、聖徳太子などリーダーが出る時は、出たのだから。しかし、世界的な人物は、過去にいない。
 ただ、世界的なリーダーは、その国の最盛期後、文明が衰退し始めた時に、その文明の象徴のような人物(天皇ではなく、その文明らしい才能)が現れる。日本は90年代に日本的システムのピークだったから、そろそろだ。彼はここまで言及していない。

 彼は、最後に未来を描いた。それはベーシックインカムが整った社会で、極貧もなく、みながのどかに生きていける、という。古市氏は若いのに、ベーシックインカムに目をつけるとは、なかなか目のつけどころがよい。
 若手で保守は、渡辺善美、橋下徹、それから私とベーシックインカムが実現すると、思っている。並べてみたら、変な感じだが、日本の格差を解決するために、何が必要かは、若手はおよそ一致する。彼は、そのベーシックインカムの制度は、彼なりにわかりやすく、明るくイメージしやすいものに描いていたのには、感心した。

 ベーシックインカムでどう変わるか?
 これは私の考え。食うため、生きていくために働け、という労働強要主義がなくなる。また生活費を得るために、人々は危ないこともしなくなる。食うものに困って、強盗する。わずかな金を稼ぐために、犯罪に手を出さなくなる。スラムなど荒廃することはなくなり、社会の秩序は乱れにくくなる。
 労働者が減ることはないだろう。無理に働くようなことはしなくなる。ただ、給料がほしいがためにするきつい仕事、スーパーの店員や3Kはアルバイトの確保に困るだろう。仕事を面白くする工夫が必要だ。

 現在も飢えている人はごくごく少数。彼らは生活保護に置かれている。よって、日本は大方、8-9割がたはベーシックインカムが整った社会とも考えることもできる、と少し前に私は書いた。少し付け足そう。

 ベーシックインカムになると何が変わるか?
 お金がない時に、必死になって、稼ぐこと、他人から借りることはなくなる。親から生活費を受けとるために、頭を下げることがなくなる。サラ金に手を出す人も減る。貧乏だから大学行けないことも、奨学金の返済で苦しむことも、金銭を得るための面倒な役所通いもしなくてよくなる。貧乏人は金を得るために、今まで過剰ともいえる手間をかけていた。そういう社会的な無駄はなくなる。それが変わる。

なによりよいのは、浮浪者がなくなることだ。社会が清潔になる。

 古市氏は2058年? 頃かな、『健康薬』を飲む、書いていた。精神を明るく快活にするための薬を飲むそうだ。向精神薬のような。彼は、一般の人が仕事をしなくなると、憂鬱になる。それを防ぐため、とした。

 彼は、失業者を念頭に置いたようだ。彼は、仕事がないふつうの人々の暮らしを知らない。その代表は主婦や引退老人だ。昼間長く、スーパーに顔を出したら、彼女達の生活スタイルは把握できる。彼女達は普段から明るい。彼女達にそんな精神薬は必要ない、とすぐにわかるだろう。このあたり、彼は精神医学の専門ではなく、彼の社会学にも穴があるようだった。

 確かに、未来ではより健康管理は重要になる。判断力を高く維持するために、頭の働きをよくする薬は欠かせないだろう。安全なものは、薬というよりは、嗜好品である。日本人は、茶を飲んでいるし、紅茶、コーヒーも飲む。これは昔の人が見たら、薬だろう。だから、現在は、薬としても、よいのである。が、仕事がなく、退屈な日常を過ごす憂さ晴らし。そのために薬を飲むわけではない。

 彼は明らかに虚構の未来を描いていたわけではなかった。ベーシックインカムと精神薬を飲むこと。悪くはないとしても、あまり鋭くはない。他は? 疲れていたから覚えてない。彼は全般的に、新しい世界観をうっすら、と示していた。若いのになかなかのものである。

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