社会 

 

トマ・ピケティの予測を上方修正すると


2014-12-25
 
 ピケティの理論に欠けるもの
 私は本屋で二冊も立ち読みした。中身が薄く、長たらしい本なので、読む気はしない。まとめたものを斜め読みした。資本家の成長率が5%で、国家は2-3%。それで、資本家に富がしだいに集まり、格差が広がるという。格差が進むと、金持ちと底辺に分かれ、まるで19世紀の暗黒社会に戻る、という。

 西洋人は、未来を原始社会と描くケースがある。
 フランスは未来への希望がないのだろうか。だから、すぐに極度の金持ちと管理された庶民達という、安っぽい未来社会を描いた。
 かつてアメリカが世紀末が漂った時期に、未来を見出せないのに、未来映画を作った。最初、未来は科学が不幸をもたらすと思われ、それを捨て去った原始社会が理想というものが描かれた。アーミッシュのような電気も車も使わない。18-19世紀ののどかな風景の社会が描かれた。そんな退廃した世界だった。フランス人の彼はまだそんなレベルの不安にとらわれているようだ。彼は共産本を読み、左派が親なら、未来は暗くなるしかなく、希望ある未来を見出せないのは仕方ない。

 最近のアメリカ映画は次の段階に進む。未来は科学技術にあふれる。が、特権者と底辺の二階層に分離した社会になる。スラム側は中央管理者に洗脳されている。が、それを不可解に思ったスラム側の人間が中央管理者達と戦い、スラム側が勝利する。そして、解放する。
 金持ちが宇宙にユートピアを作り、暮らす映画もある。地上は、管理されていて、幻想の夢を見て、日々を幸せに暮らす。その金持ちや特権階層が住む宇宙基地に、地球の貧乏人側の者が、入り込む。そして、解放するものも。

 この手は西洋人がお好きなようだ。だが、これは、間違いである。現代社会で、極度に格差が広がる雰囲気はない。底辺はさらに貧乏になっていない。底辺は新しい科学技術をどんどん使い、生活を豊かにしている。

 映画ではなく、たとえ経済学で、そんな古来の退廃した未来社会を描きだしても、それは予測法に問題があるのであって、現実はそうはならない。

 彼は、金持ちに資本や富がどんどん蓄積して格差が極度に進む、ともっともらしく描く。しかし、実際は、異なる。アメリカのセレブはせいぜい3代までだ。新しいセレブは、女優や男優、音楽家新興の企業家である。それらが半数以上を占める。そして、それら才能のある者たちが、子々孫々にわたって、その一族だけに生まれ出ることはない。

 才能に富は集まる。また才能は分散する。よって富も分散する。日本では、もっと旧家の金持ちが少ない。資本家に富がどんどん蓄積するよりも、新しい人々にとってかわる割合が多い。富が遺産で継承されて、拡散しないというのは、彼の勘違いである。彼は経済学で、虚構を描いたにすぎない。

 資本家はどんどん増える
 また資本家が少数になるという仮定が、もっとも大きな間違いである。20世紀は、資本家が増加する時代だったといってよい。社会的な能力は教育されて、多くの人がもつことになった。

 金持ちは明治の新興成金や江戸の商家から始まる。それは少数だった。が、戦後、財閥は解体され、雨後のたけのこのように様々な企業が勃興した。そして、多くの社長が財をなした。資本家が、どんどん広がり、庶民の間にまで広がった。

 これは経営学の発展による。昔は、経営の才あるものは少なかったが、最近では経営学・MBAを多くが学べる。小学校で、経営の初歩も勉強する(仕事体験学習)。20世紀初頭では、経営はごくごく少数しかできなかった。が、いまや、誰でも経営者になれる教育を受ける。

 ベンチャーキャピタルという制度も登場した。インターネットでは、個人が起業することもより簡単になり、それで世界を相手に商売できる。資本家、経営者が、21世紀初頭よりも、現在は、人口比率で大きく増える。そんな社会制度も充実する。

 さらに資本家になるための制度も充実している。個人の証券投資も日本で推奨される。それは個人の資本家が増えていることを示す。

 これららによって、富が少数の社長や資本家に集まるのを防ぎ、多くの新規資本家に、分配される。

 資本家、社会的な才能は、簡単に身につけられる。その比率はどんどん高まる。多くが資本家になりつつある。よって、資本家そのものの比率が高まる。それで、資本家がごく少数で富を独占するという状況は、永続的ではない、とわかる。しだいに、社会的な才能を高めた市民(資本家のこと)の比率が高くなる。すると、富の分散化が始まる。資本家の得られる収入がしだいに小さくなる。それによって、資本家とその他との格差自体が小さくなる。富が分散することがみえてくる。

 社会の成長率は、資本家のそれにあわせるべきだ
 ピケティによると、資本家の成長率は5%。資本家は、教育によってその人口比率をどんどん今後高める。やがて国民全てが資本家(彼は社長・経営者、株主を資本家とみなしている)になる。すると、最終的に、国家の成長率が5%に近づく。彼はそう計算して、予測すべきだった。

 現代の国家に、何%の資本家がいるのだろうか。それらを数値化する。国家全体の成長率から、資本家の成長率を除いた分を割り出す。そうして、本当の非資本家の純粋な成長率を出すべきだ。

 そして、非資本家は教育と制度によって、次々と資本家になる。この変化も明らかにする。2010年には資本家は国民全体の何%とか。それにより、国の成長率がいくらあがるか。そういうことを予想すべきであった。これなら、国の成長率がいつまでも最低レベルにとどまる、という前提をもとに未来を予測しなくてすんだだろう。

 こちらは、より繁栄する未来を見出せる。しかも、こちらは現実に近い。そして、彼は非資本家にお金を回すだけではなく、資本家の育成に力を入れるようを提案すべきだった。国民総資本家の時代を目指して。

 トマ・ピケティの予測を上方修正すると、国家の成長率は5%になる。それがより妥当な未来ではないか?

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