社会 

 


中国の対日戦略は変わった


2014-12-13

 


中国の対日戦略は、変わった
 かつての中国共産党の対日戦略は、日本から資金を援助してもらい、それでビルやインフラを作ることだった。日本のお金と技術をもらうために、媚びへつらい、ニコニコ顔で、あの手この手で日本の政財界とメディアを誘惑していた。パナソニックは、わざわざ書記長?の頼みで、中国に工場を作り、労働者を雇ったくらいだ。その後も、中国投資ブームを日本で煽ったのが、1990-2010年だった。

が、その流れは、民主党政権で変わる。昨今、中国が日本を追い抜いて、世界第2の経済規模になってからは日本からの投資を拒絶する挙動に出た。尖閣を国有化するというニュースから反日デモを行い、日本の工場・店を焼き討ちして、日本の自動車を壊した。冷静に考えると、中共は、日本の技術や投資を排除することを決断したようだ。中国はあのデモで日本の投資に依存しない、自立的にやっていける、と宣言した。
 先のAPECでも習は日本の首相の握手、その好意に対して、顔をそむけた。日本のお金はいりませんよ、という意思表示なのだろう。中国の対日戦略は、大きく変わった。

 が、いまだに多くのメディアは、過去の対日戦略にとらわれている。中国は日本のマネーをあげさえすれば、仲良くしてくれると思い込んでいる。国を挙げて、日本の会社を歓待してくれる、と思い込んでいる。あんな激しい焼きうちにあったことを覚えていないかのようだ。またお金ほしさのにこにこ顔で迎えてくれると、信じている。実に、おめでたい。それら対中投資は、共産党上部ではもはや歓迎されないのである。

 日本からの援助はいらない。それが最近、中共トップが日本に向けて放つメッセージだ。共産党は尖閣を襲い、小笠原諸島にまで中国密漁船団がやってくるが、野放しにしている。
それがお金を援助してもらう立場の人間のすることではない、と中共のトップは理解している。中共は日本のマネーはいらないと、何度も繰り返して発信しているのだ。それがわからないのは、すこぶる鈍いとしかいいようがない。

 なぜ中共はジャパンマネーがいらないのか?
 中共はシャドーバンキングの一つでも接収したら、もしくは有力幹部の一人の資産を取り上げたら、日本からの投資分くらいは簡単に手に入れられる。日本みたいにお金がなく、デフレに沈んでいた国からお金をもらう。そんなこともしなくても国内に潤沢にあるからだ。荒野に無人の街を作ることすらできるほどお金余りなので、日本からの投資をさほど必要としないのは、真実だろう。

中国は、日本のお金をもう必要としない。日本の対中投資を引き出し、お金をもらって発展するというこれまでの対日戦略は、従属国がすることで、アジアの盟主になろうとする中国のすることでない。そう、中国もやっと成金国家の面子を自覚したのである。

 それで、中国は対日戦略を修正した、と思える。

 今は、お金で日本を支配しようと画策する。日本の不動産を買いあさる。日本の大手企業すら中国ファンドが買収している。中共のほしがるものは変わった。では、何をほしがるか?

 第一に資源である。中国は世界の資源を買いあさっている。日本の資源は尖閣のみ。中国が日本と中国の領海の境で、天然ガスを採掘している。これは大問題だ。が、安倍首相が非難しない。実におかしい。日本のメディアも沈黙している。これは不可解な日本の沈黙なのだ。

 第二に、投資先である。金が余っているから、それで他国の資産を買う。覇権のためにそれを使うほどには、もっていない。共産党幹部の思惑としては、中国はいずれつぶれるから、そうなっても、財産が残るようにする。海外の銀行に預けるか、海外に投資するかしなくてはいけない。

 第三は、仮想敵である。共産党政府の独裁は人民から嫌悪されている。暴動も多い。国民の不満が中共に向かったら、共産党はもたない。それで、他に仮想敵を作り、国民の目を政府からそらせる必要がある。一つはアメリカだ。次に日本だ。安倍首相が中国に刺激的なことをしてくれるほど、中共は助かる。その意味で、中国を救っているのは安倍首相である。

 第四は、治安維持の統治法である。台湾で学生がデモをしたのは記憶に新しい。また香港でも学生が雨傘革命をした。自由を求めるナショナリズムが学生間に高まっている。中共はここに神経をとがらせている。台湾、香港の次は中国本土でそういう学生運動が発生するだろう。デモすら小さくないのに、新しい学生運動はさらに大規模になりうる。

 それを押さえ込む統治法を中国は今、探している。学生運動は強い運動にならない。台湾・香港(自由型)と一過性だった。しかし、警戒はしているようだ。日本の安保闘争(左翼型)も、天安門も大人社会にまで影響は出なかった。とはいえ、天安門を繰り返すわけにはいかない。安保闘争で日本の政治家が使った鎮圧法が、彼らには参考となるだろう。デモに放水して、長い時間をかけて、無力化する、という方式を。

 このように、中国が必要とするものは変わった。世界の秩序を乱さないように、日本の国益が損なわれないように、賢く彼らとつきあわなくはいけない。つまり、彼らの求めるものの中で、中共が崩壊につながるようなもののみを満足させつつ、彼らのご機嫌をとるのが肝要である。朝貢一辺倒の卑屈な根性では、中国とはうまくつきあうことはできない。


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