社会 

 

 

『テクノロジーが雇用の75%を奪う』の感想、資本主義の終焉とすぐ言う人の心理
2015-03-18



 『テクノロジーが雇用の75%を奪う』の感想

 (朝日新聞出版社 マーティン・フォード著)

 雇用は、機械化、電子化によって、75%は今後奪われると彼は2009年に予測した。この本はなかなか面白い。低賃金の労働者だけでなく、ホワイトカラーも仕事を失うという。すると、労働市場が縮小する。給与の総額が小さくなる。


 すると、自由市場で、買う人が減る。企業が人に販売する額は減る。企業相手の売買が増加する。彼は、そこまで言ってなくて、自由市場が縮小すると書いていた。ここが私には目新しく思えた。

 で、市場を保つためにも、失業者には給付金を出すことになるだろう、という。彼はベーシックインカムを知らないようだ。それが機械化によって、それをしなくてはいけなくなるほどの大失業時代が来るらしい。

 

その根拠としては、機械化によって、労働者が減る。給料が減る。すると、人が物を買えなくなる。すると、様々な市場が小さくなる。みなお金もってないから、という。しかし、企業間の売買は相変わらず盛んだから、どうかな。そちらが大きくなるはずだ。全体としては、バランスがとれる。だから、市場自体も大きさが変わらないだろう。

 

 人間が使う消費財は、市場が小さくなるとしても。


 

 これで、給与格差が生じるという。企業は儲ける。が、ほとんどは機械での生産となるから、どんどん労働者の割合も減る。給与も小さくなる。社会全体でそういう流れになる。だから、労働市場も縮小する。一番の問題はそこらしい。

 私は昨今の格差拡大という主張に納得していない。そうなった必然性を見出せなかった。今回、少しだけ見えた。テクノロジーによって、給与総額が小さくなる。労働者の取り分が全体的に減る。労働市場が小さくなりつつある。消費者の購買力も失われている。理論上、全体が小さくなったから、個別の給与も下がるはずである。

 とはいえ、そんなことで資本主義の破綻というほど、彼は無知ではない。この失業者達には、給料を働かないでも与える、という制度によって、解決されるだろう、と提言する。安易な経済学者と一線を画しているから、私は彼を評価しよう。

 資本主義の破綻という人は、本当の問題がみえていない
 おやじギャグが好きなのは、おやじだから。他人の気持ちに鈍感なのは、おやじだから、となんでも『おやじ』が原因とすれば片がつくというように話す人は、おやじの何が問題なのか、本当の理由を知らない。

 トヨタという大企業が儲けるのは資本主義だから。経営者の給料が高いのは、資本主義だから。なんでも資本主義とつければ、賢そうに話していると錯覚する人は、要は単に全共闘のトレンドを語っているだけで、本当のことは知らない。

 『ゼロ成長だから、資本主義の破綻だ。』、『格差が拡大するから、資本主義の終焉だ。』 なんにでも『資本主義の終わり』と最後に付け加える人は、そうすれば左翼にとって知的にみえることをよく知っているのだろう。右派から見ると、マルクスにかぶれている危険人物としかみえない。こういう人たちの本心は全共闘から喝采を浴びたいのだ。せいぜいそんな小心なのだ。

 

 それは、資本主義体制のどこに問題があるか、わからない人が使うセリフである。わかっていたら、資本主義全体をぼんやり指摘することはない。

 的確に経済体制の問題を論じられる人は日本にいないのか。

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