短編 自警団(地域自治体による自主的な電波犯罪の監視)


自警団(電波犯罪者調査隊)

 電波犯罪が認知されてから、そのあまりの犯罪者の数の多さには、警察には任せておけないと、自治体組織は、地域ごとに自警団を結成する。本当は、大型のレーダーで、電波検出を一手に行えばよいのだが、外国にはそういう技術があるにしても、日本にそれはまだなかった。そのため、自治体組織は、自ら、電波検出器を集めて、自治体の地域内で、電波犯罪をやめさせるべく、監視に乗り出す。電波犯罪の告発から半年後から、この動きは活発になってゆく。そして、そういう動きを背景に、若者も電波犯罪者調査隊というものを結成する。これは、新しい遊びである。誰が、一番、電波犯罪者をみつけるか。そういう競いあいだった。

 突然、未調査地区に夜間、出没して、一斉に調査してゆく。彼らが現れれば、一軒残らず、犯罪者をみつける。彼らの過ぎ去ったあとには、完璧なる電波犯罪者地図以外、何も残らないと言われた。彼らの存在は、隠れてなおも電波犯罪を行っていた者には、恐怖だった。彼らは、しかし、警察や日本の治安にとっては、正義の使者だった。彼らの活躍はたくさんの人から評価され、支持され、歓迎された。

  彼らは、一地域に夜間現れた。そして、自前の電波検出器で、しらみつぶしに、電波犯罪者宅を調べ上げていった。そのスピードは早く、数時間で終え、電波犯罪者マップを完成させる。検出データは、すべて記録された。それは、将来証拠になりうる質があった。その調査の正確さは、まさに完璧だった。このマップはもっとすごかった。

 一見何の変哲もない白地図だが、個々の住宅に、犯罪者宅のところには、放出していた電波周波数が、入力されていた。そして、ある暗号を解くと、なんと電波犯罪者のところだけが、赤く浮き上がるしかけがあった。

ホームページ上に、掲載されていた。

 マスコミはその地図を競ってほしがった。そして、暗号の解読用のキーワードをほしがった。

 こういう自警団が、日本各地に出現する。住民自ら電波犯罪者からわが町を守ろうと立ち上がったのである。それが、また日本全国へと広がり、反電波運動が大きくなっていくのである。そうやって日本に拡大した電波犯罪は急速に姿を消した。もし地域自治体が自警団を組織していなかったら、電波犯罪の撲滅にその何倍も時間がかかっただろう。多くの人々は、自警団に感謝した。

2003/02/27 編集 校正 2015/4/20

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