発達心理 developmental psychology

 

 社会思想統合理論

 

社会思想の終焉6 社会思想の統合 その理論とは? 2015-2-7、3/11、2017/7/24


ここの理論は、世界の先端だ。次世代のスタンダードがここにある。見抜けたらなかなかの通だ。これは日本人がはじめて世界の思想を書き上げた、という空前の代物だ。

 


 昨日は、発達心理論から人類の次のテーマ「空間」を導きだした。思想区分は 理性 → 社会 → 空間 の順だ。

 しかし、2015年現在、まだまだ社会の改良が必要だ。空間を改良して、世界をよくしよう、という運動は強くない。また新しい思想が登場するには、現段階の思想を完成させる必要がある。それなしに、中途半端に次の段階に進むことはない。では、社会思想を完成させる理論は、どんなものだろうか?

 共産主義者はすぐに間違える。資本主義が終わると、社会主義になる、と。が、地球上の全国家が社会主義国家になることは、後退であって、進化ではない。それは1992年に戻り、そのまま社会が崩壊する考え方だ。

 

 資本主義がうまくいかないから、といきなり、国有化して、企業や私有財産を没収して、社会主義化したら、それはもう自由と民主主義の破壊である。20世紀初頭のソ連のような暗黒社会へと逆戻りだ。発展ではなく、100年分の退化だ。

 中国のように社会主義のゆきづまった時に、資本主義を導入して、発展を継続した。社会主義は資本主義化する。それこそが世界共通の真理である。それが正しい社会の発展である。

 

 しかし、それは部分論である。この社会論一つだけで、旧来の社会思想をすべて超えるものとはならない。また単純な誤りを多数含むインチキ理論(共産主義のこと)では、社会思想をとうてい統合できない。念を押した。


 

社会思想の統合理論の条件

まず、それは1,あらゆる社会組織を分類できる理論である。社会組織にはさまざまある。資本主義、社会主義、官僚組織、個人主義組織、集団体制などなど。次に、2,適切に分類していることが大切だ。ただ羅列したものではな い。ポートフォリオのようにあいまいに分類するものではない。それは3,「社会」そのものを純粋に研究した成果でなければならない。なぜなら、カントからヘーゲルは理性その ものを純粋に探求したからだ。

1,あらゆる社会組織を分類できる理論
2,適切な分類
3,「社会」そのものを純粋に研究した成果

それはどこにあるろう?

もうおよそ見当がついただろう。「社会」を純粋に研究したのは、社会学(経営学、経済学、社会学)だ。あらゆる組織を扱うのは経営学の一分野、「組織形態論」である。そこで、組織を時間軸という指標で扱うのは、「社会組織成長論」である。それは多くの組織を分類する。おそらく、社会思想を完成させるのは、あらゆる組織形態を、時系列に、区別する「社会組織成長理論」かもしれない。あっという間に、たどりついてしまった。

 

社会組織成長論とは?

いくつかあるが、ラリー・グレイナー(Larry Grainer) が1972年に発表した「組織ライフサイクル理論」が最も完成されている。彼は企業の成長が5段階とした。

 段階 成長要因    危機           組織形態

第1段階 創造性による成長 リーダーシップの危機  原初組織
第2段階 指揮による成長 自主性の危機       集権的な組織
第3段階 権限委譲による成長 コントロールの危機  分権的な組織(事業部制組織)
第4段階 調整による成長 形式主義の危機      官僚組織
第5段階 協働による成長 新たな危機        集団内包制組織
(グレイナーの理論より )

各段階の組織形態を右に記す。

第1段階 創業期 原初組織

創業者が会社を作る。部下も少なく、規則もない。が、数人が共同で作った会社なので、誰が社長かはっきりしない。

 誰が統率するかでやがてもめる。

第2段階 命令系統 集権的な組織

それを克服すると、誰が社長か決めて、命令系統をしっかりさせる。これが指揮による成長だ。この体制では、組織が大きくなっても、社長が細部まで命令しなくてはいけない。

 が、社長一人が末端までは命令できないから、末端が動かなくなる。それが自主性の危機だ。社長命令が絶対で、部下が自主的に行動できないことから起きる危機だ。

第3段階 権限委譲 分権的な組織

トップ一人がすべてを統治できない。そこで権限を下に委譲して、事業部制などにする。すると、多くの部署が自主的に活動して、組織は安定してくる。権限委譲をさらに進めることで、この組織は発展する。部下に、自由を与えることが解決だった。

 やがてあまりに権限委譲すると、今度は末端が勝手に行動するようになって、組織全体のまとまりがなくなる。管理不能となる。

第4段階 調整による 官僚制組織

 そこで全社を管理する調整専門の組織を採り入れる。人事は人事のみ、経理は経理のみ、専門分野ごとに組織を作る、というイメージだ。それはトップとつながっている。専門的な組織が生じる。やがて、それは巨大な官僚組織となる。これは、能力をもつ者に判断して行動する自由を与える制度だ。

 すると、何をするにも、いくつかの専門家の判断を仰がなくてはいけなくなり、手続きがたいへんとなる。組織は硬直する。そして、巨大官僚組織はあっという間にゆきづまる。

第5段階 協同 集団制組織

巨大組織では、組織が硬直して動かない。その反省から、巨大組織を解体して、小会社に分割する。分社化である。分社するほどでない時は、会社の中に、専門家を集めたようなプロジェクトチームを作らせて自由にやらせる。このように社内に小さな組織を多数たちあげる体制にする。 大きな会社の中に、小さな会社が多数ある、というような組織形態となる。

グレーナーは1970年代に発表したから、第5段階まで詳しく論じられなかった。今では、会社の組織形態の発展はこのくらいは解き明かせる。

 組織成長理論で、あらゆる組織を時間軸で分類できた。これが社会思想の統合理論だろうか?

 

資本主義や社会主義はどこに位置づけられるか?

 組織成長理論は企業をケースとして、明らかになったものだ。それは社会組織の一般論だ。企業だけでなく、社会組織一般、つまり、 国や地方自治体、学校、宗教団体も同じように発展するはずだ。よって、あらゆる組織をこの理論に位置づけることができるはずだ。

 

資本主義とは、民間の自由が保証された社会だ。それは国家の中に多数の企業が独立して活動するという組織形態だ。つまり、それは集団がたくさん集まってできる体制だ。5段階目の「集団制組織」とみなせる。


 社会主義は、個人と企業の権限を奪うことで、国家による統制を達成する。つまり、独裁であり「集権的な組織」だ。また、企業活動を許さないということからは、社内で小集団をもたない単一組織で、第2段階から第4段階までの組織形態である。

 

 ソ連が鉄の官僚組織(4段階)を作り上げ、崩壊したことを思い出そう。レーニンが完全な独裁体制(集権組織)を築いた。組織形態ではそのように分類できる。社会主義国家は、1-4段階までは、発展できる。が、5段階目(民間が存在する国)には、移行できない。


 みえてきただろう。社会主義は2-4段階の全体主義型の組織をさす。社会主義は官僚組織以上には発展できな い。そして分解する。資本主義は集団を単位とする組織形態で、はじめから、5段階以降だ。5段階めの組織形態である資本主義は、1-4段階の社会主義(多くは独裁という集権組織の段階2である)よりも、段階的に優れている。

 

 社会主義の次の段階は資本主義である

 よって、中国が官僚体制(4段階)となり、その崩壊の危機を回避するために、資本主義(5段階の小集団の組織構造)を導入したことは、組織成長理論でも、理に適う。そうするか、ソ連のように官僚組織=共産主義体制の最終段階で、国が民主化という手法で、企業活動の自由を採り入れ、資本主義体制になるしなかったからだ。そうしないと、社会主義国家は、5段階めの組織形態へ移行できなかった。

 

 よって、社会主義国家が崩壊して、資本主義国家(ソ連は民主化してそうなった。中国は資本主義制度の導入)に変化するのは、社会組織成長理論の示す適正な発展だ。それは、歴史の必然であった。

 組織成長理論では、社会主義は最終的に資本主義に転化する。資本主義は社会主義より進んだ組織形態であり、思想なのだ。

 

第6段階目の組織 個人の適性による成長 個人制組織

 

第5段階(資本主義形態・集団制組織)が最終形態か? それは違う。個人主義的な組織がまだある。それは、上に示されていない。私は、第6段階に個人主義的な組織がくる、と考える。確か、グレイナーも集団活動は、メンバー間の軋轢が生じて、危機に陥る、とその後の論文に書いた。集団的な組織とは、小さなグループである。身軽で意思決定が早く、行動は機敏で、様々な問題に対処できる。この組織形態の利点はある。

 

 

が、問題もやがて生じる。グループ内の強者が利益を独占しがちだ。弱い者は、グループの中で、ひどい扱いを受けがちだ。やがて、個人は集団に縛られるよりも、自由に個人活動することを選ぶ。個人はその集団から分離して、ばらばらとなった個人を単位とする組織がはじまる。

 集団単位の組織では、メンバーがいつも同じだった。それで、向いてない仕事をしている個人が疲れてくる。それが適性の危機だ。それで分社でできた小さな会社は分解する、と私は考える。

 

 個人単位型組織    (コラボ組織、プロジェクト型組織)、

 すると、それまで集団ごとに所属していた人は、個人になる。しかし、社会と関わっていかなくてはならない。コラボレーションをして、お互いに仕事をする。

 

 企業内では、新しい動きが出てくる。小さな会社(分社)はいつまでも続けかない。プロジェクトごとに、小さな組織を社内で立ち上げるほうが、効率的と思われる。社員は自由にどのプロジェクトに参加するか、自ら決める。プロジェクトが始まる度に、人々は集まり、活動する。それを達成すると解散する。このように個人の適性によって、組織が作られる。この段階では一人一人が資本家や経営者のようである。

 21世紀となってからは、インターネットで、個人によるビジネスが増えつつある。そして、個人どうしが集まるコラボレーションも盛んだ。個人を自由にする。その上で、プロジェクトごとに組織を作る。これが現在の新しいスタンダードである。これが私のいう個人制組織である。

 

 おそらく、個人より細分化できない、これが最終形態だろう。

 

 現在、会社でも、プロジェクトごとに社員を集め、活動させることが流行する。それはプロジェクトが終わると解散する。そういう意味で、分社とは異なる。インターネットでも、個人同士が集まって、コラボして、組織をつくり、何かをなしとげる。そんなものが一時流行した。個人主義的な組織とは、そういうものをさす。

 

さて、個人制組織の段階を先の理論に加えよう。


第1段階 創造性による成長 リーダーシップの危機  原初組織
第2段階 指揮による成長 自主性の危機       集権的な組織
第3段階 権限委譲による成長 コントロールの危機  分権組織
第4段階 調整による成長 形式主義の危機      官僚組織
第5段階 協働による成長 新たな危機        集団単位の組織
第6段階 適性による成長              個人主義的な組織 コラボ型組織
 (大野の改良理論)

 これが組織成長理論の完成版である。

 これはあらゆる組織を網羅するとても強力な理論だろう。当然、既存の社会思想も、位置づけることができる。

 まず前回で、社会主義は行き詰まり、崩壊することを明らかにした。資本主義の優位性も明白に示した。さらには、資本主義と社会主義以外にも、1940年代の独裁国家、1990年の地域主義、1950年の民族主義、2010年の地域主義。上の理論では、それらも、分類できる。それはまた今度にしよう。

 難解? こういう専門的な話は経営学を治めてないと、慣れない。理性期の最高の哲学が超難解ヘーゲルだった。社会期の統合理論=集大成もそんなに生易しいものではない。

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