発達心理 developmental psychology

 

 社会思想統合理論

 

 社会思想の終焉4 21世紀以降の課題 「空間」 2015-2-5 , 2017-7-24

 

昨日、社会思想の末期にそれを統合する理論が登場する、と記した。しかし、いまだに社会思想を統合する理論を誰も見ていない。世界中にそれは知られていない。もしそれがあるなら、新聞、メディアはこぞって取り上げるだろう。まだ社会思想は末期に近づいているとしても、終わりまで時間はある。首を長く待っていたら、それは世間の注目を浴びて、現れるだろう。

思想区分で次の人類のテーマは何だろうか?

 

発達心理を考えてみよう。若者は以下のように探求テーマを変える。

 

理性 → 社会 → 空間

 人々は、理性に興味をもった後に、社会に強い関心をもった時期がある。青年期だ。

 

 高校生は「理性」を探求する

 灘の高校生は、勉強に飽きたら、思想や哲学を読み漁る。私も高校生で哲学と思想に関心をもった。フランスでは、15-17歳頃に哲学思想を教える。つまり、その年齢には、哲学と思想に関心がゆく。その年代は思想を学びたくなる。

 

 大学生は「社会」をテーマにもつ

 大学生になると、哲学と思想への関心が薄くなる。そして、社会をよくすることに熱中する。これは全共闘や台湾の学生運動、香港の雨傘革命。社会運動をはじめるのは大学生が主体だ。18歳以降で大学生からだ。高校生は内向的で、社会運動をする意欲は弱い。

 

 人は、15-17歳に哲学・思想に関心がゆく。そして、18歳からは社会に熱中する。特に、優秀な 学生で感受性が高い人々は、社会活動に参加したがる。鈍い人は、自分の内的課題も見出せないから、そういう面は弱くなるのはしょうがない。

 

 大学生4年目以降は「空間」的なものに興味をもつ

 学生の社会運動熱はしかし、21-22歳に急速に冷える。実際に、大学を卒業する頃には、学生運動は青くさく思うようになる。彼らの心は変化している。社会運動に情熱をもてなくなっている。何か別のものに関心があるようだ。

彼らは「社会運動」の次に何を関心にもつか? 何に興味を持ち始めるか? それが次の思想の答えだ。あまり難しくない。青年の関心、その統計をとればはっきりする。

 私の経験では、「建築」、「都市計画」に興味をもつ。「インテリア」に関心をもちはじめ、しだいに、「建築物」そのものに興味をもつ。それが発展すると、「都市空間」にいたる。彼らの関心は「空間」だ。私以外にも、大学の後半に、突然、建築物に興味をもちはじめる者たちは多かった。人は20-21歳から空間的なものに関心をうつす。

 

青年期の発達心理
 理性(哲学・思想) → 社会  → 空間
 15-17歳       18-20歳  21歳〜

 

 発達心理のテーマ(発達課題)は、このように変わる。青年は、理性を求め、次に社会に熱中して、そして、空間を探求する。この青年期の発達心理は、新しい理論だ。世界初のアイデアである。

 

発達課題と人類の課題は一致するなら、次の人類の課題は空間だ

 

「人類の思想テーマの変化=発達課題」は仮説だ。この仮説によると… 人は「社会」の後に、「空間」に興味をもつ。だから、人類の次のテーマは「空間」になる。次の人類のテーマは「空間」である。すると、こう思想区分をあらわせる。

 

思想区分
 理性       → 社会   → 空間
 15-19世紀     20-21世紀初頭 21世紀以降

 

 しかし、発達課題と人類の課題が同じ順番になる、という根拠はまだ示していない。仮説としておく。

 

本当に人類は次に、「空間」に関心をもつのか?


 人類の探求テーマに条件がある。それを探求、改革することで、人類は大きく進歩する。つまり、空間の改革すると、この社会改革の停滞を打破できるのだろうか? これはまだなんともいえない。

 

 「空間」の研究がまもなく時代の主流になるはずだ。もしそうなら、現在でも、その潮流が小さく生じているはずだ。それら新時代の端緒はどこに現れているのだろうか?

 

 一つは、事務所のアメニティの改善にみられる。人々が快適に過ごせる空間。それを模索する動きが1990年にあった。仕事の能率を高めるために、事務所はどんな空間にすればよいか。それは社会制度(企業の制度)の改革ではなかった。いかに快適な空間にするか。臭い、音、人間の動きの範囲、それら空間の要素をよりよくすることで、効率を高めることを模索した。

 創造性開発にもみられる。人間はどんな場所で創造性を高められるか。自然の中、リラックス、臭い、音 (自然の音)など空間的な面が特に研究されている。これも社会制度の改革ではない。組織内の創造性を高めるには、どんな制度にすればよいか。創造性を取り込むこと、学習する組織などは経営学でよく研究される。それら企業の研究は、社会思想の一分野だ。が、空間をいかにすると、創造性があがるかは、空間論の範疇だ。

 都市の快適さ。これは90年代によく研究された。その成果としては、自動車が入ってこない都市などある。まだこの都市計画が、都市の発展に直接結びつくという水準には至っていないのだが、新しい流れである。

 最近は大規模スーパーマーケットを郊外に設置するか、駅周辺に作るか、という問題で、駅前スーパーが見直されている。都市は、駅を中心に発展する。そういうものが空間的に自然という理由から採用される。郊外は地価が安いという経済の論理で、1970年代からの主流だった。が、それでは町そのものが荒廃する。それで、駅側、一番の繁華街に大店を作り、にぎわいを取り戻すことが、推奨されている。これは空間を大事にする考え方である。

 まだまだこれら空間技術・理論が時代をリードするものではない。が、しだいにその存在感が高まっている。まだ社会制度を改良したほうが、劇的に問題が解決するという状況は続いている。しかし、それも弱くなつている。改良すべき社会の欠陥は、昔のように誰の目にも明らかではなくなってきたからだ。社会改革に人々は疲れてきている。やがては、「空間最適化」という新しい方向性がそれを上回るだろう。

 

「空間」的なものは、それまで社会性の改善ばかりに、目を向けていた人類にとっては、新しいアプローチである。空間論的なアプローチは、しだいに影響力を増している。確かに、次の時代のテーマのように思える。

 

 社会思想の最後の段階が終わるまでは、次の時代にはならない。社会理論、社会制度の改革によ る発展は、しだいに低下している。が、まだまだ必要なのだ。今回は、次の時代の思想テーマをみた。「空間」である。

 

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