完成度 8
犬 こんにちは
猫、こんにちは
犬、この前、裁判に行ってきた。
猫、えっ君が裁判?笑うね。裁判?笑うね。裁判?笑えるね。
犬、三度も言うなよ。俺の裁判じゃないよ。俺のトモダチが、電波飛ばして捕まったんだ。それを弁護してきたんだ。
猫、ほぉ、君は漫才師なのに、いつから弁護士になったんだ?
犬、そいつは卑怯なやつだって証言してきたんだ。
猫、友達のことを卑怯呼ばわりするなよ。
犬、実は、はじめはかばってあげようと思ったよ。でも、そいつ弁護の証言しても、けちでお金くれないんだ。思わず、法廷で「卑怯で陰険なやつ」って言ってしまったよ。あっはっは。
猫、弁護にならないじゃん。わけを初めから言えよ。
犬、裁判長マイク入廷
猫、ただいまより「電波飛ばしてごめんなさい事件」の裁判を始めたいと思います。皆さん、起立、礼、着席。
犬、では、事件の中身を言ってちょーだい。検事君。
猫 (検事役)、被告ダチオは、98年から6年間にわたって、自宅から電波を被害者Aに飛ばしました。それで、心臓攻撃、頭痛、腹痛、盗聴、思考盗聴、耳鳴り、おでこ電波、語りかけ、催眠電波、目覚まし電波などありとあらゆる電波アタック以外を続け、
犬、それ全部してないのか。
猫(検事役)、いえ、それ以外の以外を行い、Aを苦しめていました。
犬、なんだ全部やったのか。
猫、そうだよ。それがどうしたって言うんだよ。何か悪いことでもあるのか?
犬、悪いから告訴したんだろう。検察君。罪状は何?
猫、はいそうです。よって、電波法違反、傷害罪などで、
犬、などって、何?
猫、おほん。失礼。電波法違反、傷害罪、そして、ストーカー規制法違反などで、
犬、ストーカーですね。
猫、ストーカー規制法違反です。被害者の苦しみの時間を考えて、その被害の6年より長い、懲役5年を求めます。
犬、被害者の苦しみより、短くていいのか?
猫、あっ7年です。7年を求刑します。
犬、では、弁護人。言いたいことは?
猫(弁護人役)、ダチオは無実です。ここに証拠があります。ダチオは自宅にいたと言いますが、ダチオはこの六年間、家出をしてました。これが証拠です。家の庭にテントを張り、春夏秋冬そこで暮らしていました。ここにその写真を四枚出します。
犬、家とその庭に張ったテントに住むのも同じじゃないか。却下。
検察官、ダチオがやったという証拠があるのか。
猫(検察役)、今から、被害者A、証言します。
犬、俺の進行を無視するなよ。
猫(被害者役)、わだしは、1996年の冬の土曜日、突然、心臓が痛くなりました。1ヶ月痛くて、その後ずっと頭が痛くて、今度は眠られない日々、1ヶ月続きました。これがギネス記録です。申請します。
犬、はい受理します。
猫(被害者役)、すると、1ヶ月たつと、突然眠くなり、私はスヤスヤと眠りに落ちて、目覚めたら、雪国でした。
犬、トンネルを抜けたら雪国ですが。
猫(被害者役)、そうです。川端康成です。
犬、違います。
猫(被害者役)、なんでもいいです。1年間も寝ていたのです。それから頭痛が続いて、或る日、カレンダーをめくるともう1999年の世紀末。ソ連は滅んで、『共産主義よ。お前はもう死んでいる。(決め台詞のように)』と、テレビでやっていました。
犬、荒廃した人心、力の強い者だけが生き残り、恐怖と暴力だけが支配する世界。それが世紀末、電波列島日本。そこに決然と闘いを挑む者が現れた、電波真剣奥義正当警鐘者、○○○。彼のことを後の世の人は、白衣の天使と呼んだという。
猫、電波真剣奥義警鐘者って何ですか?
犬、電波のことを真剣に考えて、その犯罪の奥義を暴露して、社会に正当に警鐘した者だよ。
猫(被害者役)、長いだじゃれだけど、全部、電波のせいでスカラー。私も盗聴されました。私が、今日のおかずは、クリームシチューしようと考えると、宅配が届くのです。クリームシチューセットが。わだしは、怖くて、本当に食べれるのか、作って試食しました。うまがったです。それから、毎日、夕食のおかずが届いたのです。
犬、弁当屋に頼んだのではないですか?
猫(被害者役)、違います。その後は、語りかけもありました。
犬、どんな?
猫(被害者役)、「わしの名前は、だちおじゃ。ずっと盗聴しちょった。お前の好きな人も誰か知っているぞ。同級生の卑怯で名の通った赤杉君だろ。ほれっほれっ。」
犬、本当に聞こえたのですか。
猫(被害者役)、はい確かに。
犬、では、ダチオに尋問する。ダチオ君、あなたは無線機を使って、電波をAさんに浴びせましたか?
猫、(ダチオ役)、私は本当、電波飛ばしてたんです。弁護士の連中は嘘言ってます。私は有罪です。私は自白します。
犬、弁護人どうなんだね。
猫(弁護士役)、じ、じっ実はダチオは罪を認めています。反省していますし、どうか罪を軽くしてやってくれませんか?
犬、だから弁護士は被告の利益なんか考えないんだ。最初から嘘なんかつかずに本当のことを言え。検察。Aさんがやったという証言をする人がいるそうだな。
猫(証言者役おじょう)、はい。私は、だちおの隣に住んでいたオジョウの妻です。みんなは私のことをお嬢様か、奥様と呼んでます。
犬、奥様、ダチオは何をしたんだね。
猫(おじょう)、ダチオの家に合鍵をもって侵入したら、ダチオはテントの中で、無線機をいじくってました。私は見ました。
犬、もっと奥様、詳しく教えてください。
猫(おじょう)、私とダチオの親とは昔からの知り合いで、合鍵を貸し借りする仲でした。時々、お米がなくなったら、ダチオの家に合鍵で入って、お米を借りていました。誰もこのことは知りません。
犬、それ泥棒ですよ、奥様。ダチオが無線機から電波を飛ばしていたのですか?
猫、(おじょう)はい。私がダチオのいるテントにゆき、ダチオ何しているの?というと、ダチオは、無線機を見せてくれて、「これでAをいじめてやるんだ。あいつは、政府の犬だ。電波で頭痛を起こすこともできる。一緒にやらないか。」と言って、電波飛ばして、Aが頭を抑えてうめく様子を盗聴して、私に聞かせてくれました。
犬、はいわかりました。決定的証言です。次は弁護士。証言者がいるそうだね。
猫、証言者、漫才師のたぞき君。
犬、(たぞき君)、私はダチオの小学校からの友人です。ダチオは性格がよくて、お金の支払いもいいし、私は嘘なんかつきません。ここに、宣誓します。
猫(弁護人)、裁判で嘘をついたら、偽証罪で、訴えるからね。本当のことだけを言うように。
犬、(たぞき君)ダチオに家に行ったことがありますよ。わたしは金で雇われたんじゃないですよ。絶対にね。
猫、(弁護人)余計なことは言うな。指一本を見せる。(これこれっ)
犬、(たぞき君)不可解な顔をして、弁護人に指を三本出す。三度ほど、それをする。
猫(弁護人)、首を横にふり、指一本を強調する。
犬、(たぞき君)もう一度、指を三本出す。
猫(弁護人)、首をふって、一本出す。
犬、(たぞき君)、納得しない顔をして、首をふって、弁護人の様子を見る。本当のこと。言うよ。言うよって顔をする。
猫、弁護人は指を一本で変えない。
犬、(たぞき君)、交渉決裂。実は、ダチオは、卑怯なやつでね。
猫(弁護人)、意義あり。その質問は事件と関係ありません。
犬、(たぞき君)、何の答えてませんよ。いつもテント隠れて、陰湿に無線機で電波飛ばしてましたよ。彼は陰険なやつです。俺は見ました。彼は、無線機を取りだして、俺には歩く蟻の音も聞こえるんだとくだらない自慢をしてました。
犬、たぞき君ありがとう。これから判決を言い渡す。
猫(弁護人は頭を抑える。)あーとうとうマイクの裁きだ。しかし、どうしてこんな裁判に10年もかかったんだ?
犬、マイクです。93年に最初告訴した時、電波が検出されなくて、状況証拠だけだったのです。
猫、証拠もないのに告訴したのですか?
犬、だから、証拠が不十分なので、判決を遅らせました。ですが、それが正解でした。犯人はばれていないと調子に乗って、どんどん犯罪の手を広げました。そのせいで、ぼろが出たのです。名づけて、逃走して、ストーカー呼び込み作戦。
猫、どんな証拠が出たのですか?
犬、2002年にようやく、ストーカーの証拠、盗聴サイトの存在が明らかになりました。それで犯人がすべてわかりました。が、盗聴で得た情報だから裁判の証拠にはなりません。
猫、どうしたのですか?
犬、1年待ちました。すると、電波検出法がわかり、さらに証言者もみつかりました。
猫、だから遅らせたのですか?
犬、私にはすべて見通し。初めからの計画です。
猫、世間は被害者Aが不利だと言ってましたが。
犬、それもまたおおいなる計画です。真実は世間の嘲笑で貶めることはできず、必ず最後には勝つ。それを示す演出です。
猫、10年前にわかってたのですか?
犬、もちろん。
猫、六年前の事件なのに、10年前からわかっていたのですか?
犬、すべては、私の手帳に書いてありました。
猫、すご。
犬、では判決を言い渡します。ダチオは、被害者Aに電波を6年間も浴びせ、傷害罪とストーカー規制法違反、電波法違反で、合計で、懲役3年。そして無線機永久剥奪と、2度とAに対して三百メートル以内に近寄ってはならない刑を言い渡す。ひったてえーい。ってな具合でね、とうとうだちおは暗黒のムショの世界に落ちたのさ。
犬、猫、ありがとうございました。
03-10-10 10-13 10-14 校正 2015/4/20